アクトタイトル「金貨と魔竜と世俗の鎖」

アクトトレーラー

時は1070年。


ここは地獄の一丁目、シュパイヤーマルク辺境伯領。


選帝侯の指輪探索に成功し、帝国の陰謀と国内の分裂を未然に防ぎ、
彼らを襲う喫緊の苦難は去ったかに見えた。


――だが、ここに来て領内の体内を蝕む真綿の毒が牙をむき始めた――


先王カールに対する長年の軍役により出費が増大し、
それに対する恩賞は支払われる兆候もない。
そして先の政情不安により領内が俄かに乱れるも、それを鎮める余裕もない有様。
そう、辺境伯領の財政は最早限界に達しようとしていたのである。


ブレイドオブアルカナ“金貨と魔竜と世俗の鎖”


「今の貴様らは手足がないも同じ。助けを受けるは操り糸を体に巻きつけるも同じ。
 ――さあ人の子よ。この危機をどう切り抜けるつもりだ――」


レギュレーション

年代:1070年
使用経験点上限:120点以下、それ以上は要相談
エピックプレイ:採用
特殊因果律:要相談


各PCには以下の設定がつく

PC1:辺境伯領の建て直しを任されている。
 推奨特殊因果律:特になし
PC2:辺境伯領に仕える騎士である
 推奨特殊因果律:忠臣
PC3:リディア=プリーエンツに仕えている
 推奨特殊因果律:特になし
PC4:ファルティン=パーデルボルンの知己である
 推奨特殊因果律:名君の証
PC5:PC1の友人である
 推奨特殊因果律:友の絆


上記の推奨因果律は「必ず修得しなければならない」というものではなく、「これ以外の修得を認めない」というものでもない。あくまで“推奨”である。


ハンドアウト

PC1 因縁:○強敵/目の前の現実      推奨アルカナ:デクストラ
 切実な現実――君には金が必要だった。膨らみ続ける借金、数々の政情不安による人心の混乱、そしてそれによる国土の荒廃。それらをしのぎ、シュパイヤーマルク辺境伯領を護るためには、大量の金が必要なのだ。
 そんな折、辺境伯領に一通の手紙が届いた。それは借金の期限を告げる通知と、返済できぬなら選帝侯の指輪を担保として戴くという通知であった。どうやら何者かが選帝侯の指輪ほしさに辺境伯領の債権を手に入れ、指輪の正当な所有者になろうと企んだらしい。

PC2 因縁:☆告発/ベイレムーヴァ     推奨アルカナ:アダマス
 凍の指輪の探索に成功し、内憂外患を何とか排除できたと思ったのも束の間、辺境伯領は資金難と政情不安による人心の荒廃により、いまだ混乱の只中にあった。そんな折、信頼できる情報筋から連絡があった。何でもかの強欲の魔竜ベイレムーヴァが凍の指輪に興味を持ち、辺境伯領の債権を手に入れたという。その返済期限は、およそ3ヵ月後。
 このままでは亡国は必至である。君は自らができることを為すべく、伯の居城へ赴いた。

PC3 因縁:○主人/リディア=プリーエンツ 推奨アルカナ:マーテル
 君の主、リディア=プリーエンツには大きな秘密がある。彼女は選帝侯の指輪を現在の辺境伯から預かっている、指輪の真の所有者なのだ。そして彼女はその責務を果たさんとして、私財をなげうってまで辺境伯領の再建に尽力している。だが、悲しいかな現在の辺境伯領は彼女1人で何とかできるような代物ではない。君は彼女の力になるべく、辺境伯領再建の方法を模索している。

PC4 因縁:○強敵/辺境伯領の資金難    推奨アルカナ:コロナ
 ケルファーレン公代理、ファルティン=パーデルボルンが君に頼みがあるという。何でも辺境伯領の持つ債務を整理して欲しいという。より厳密に言うと、辺境伯領の財政を健全化して債務を返済できるようにして欲しいとのことだ。辺境伯領に貸しを作り、かつ他の勢力が介入できないほどの体力をつけさせるのが目的らしい。

PC5 因縁:○友人/PC1         推奨アルカナ:特になし
 君には、PC1という親友がいる。特に何か約束を交わしたことはないが、一方が危機に瀕すれば他方が必ず助けに来るという関係である。
 そして今回、彼の祖国が滅亡の危機に瀕しており、その存亡が彼に託されたという噂を聞きつけた。そして知った以上は見過ごすことなどできるはずもない。君は彼の元へと急行した。

特記事項:PC1と相談の上、関係を○慕情などにしてもかまわない。
もっと言うと別にハンドアウトとモチベーションを自作してくれてもかまわないのだがw


PC間因縁は「PC1←PC2←PC3←(PC4←)(PC5←)PC1」ととる。ここで「PCx←PCy」とは「PCyが“因縁/PCx”を持つ」ことを意味する。


特別ルール
今回、疲弊した領土を立て直すという状況を再現すべく以下のルールを導入する。
債権回収の期限は3ヶ月後であり、それまでに半月を1時単位として進行する。
PCは共通のリソースとして以下の数値を持つ。

1:資源(初期値:3)
 領内に蓄えられた資金や食料、建築資材などを総合したもの。設備を構築したり環境を整えたりするために必要。なお、PCたちはいつでも[負債]を+1することで[資源]を+10できる。[資源]が負になった場合、必ず[負債]を増やして[資源]を0以上にすること。

2:負債(初期値:10)
 辺境伯領が抱えている借金。これを返済するのが本アクトの目的となる

3:情報(初期値:3)
 辺境伯領内の地理や発展の余地、最新の技術をどれだけ理解しているかを総合的に表した数値。[産業][環境]は[情報]が上限となる。

4:産業(初期値:2)
 辺境伯領内の商工業や農業の発展具合を示したもの。収入の基礎となる

5:環境(初期値:2)
 治水設備や治安のよさなど、辺境伯領の住みやすさを数値化したもの。施設などの条件になっている。

6:民忠(初期値:2)
 領内の民がどれだけ辺境伯を支持しているかを表す。[民忠]の上限は[産業]と[環境]のどちらか低いほうとなる。

7:税収(初期値:−6)
 辺境伯領から1時単位に得られる[資源]の数。基本的には以下の計算式に従う。
 [税収]=[民忠]+[産業]−[負債]


1時単位として以下のように進行する。

1:方針決定フェイズ
 マスターシーンとする。全員が登場し、各PLはそれぞれ以下のイ〜チの行動からどの行動をとるか決定する。このとき、使用する技能と特技も宣言する必要がある。複数人が同じ行動を選択してもよく、その効果は重複する。
 また、このとき[資源]を10消費することで[負債]を−1できる。これはPCの行動を必要とせず、何回行ってもよい。これは方針決定フェイズでのみ行えるので注意すること。

イ;徴収 必要資源:なし
 [税収]にあるだけ[資源]を増減させる。この行動は1時間単位に1回まで行うことができる。

ロ;情報収集 必要資源:1
 辺境伯領内の内情や生産できそうな特産品を調べたり、基礎研究を行い技術力の基盤を作る。[情報]が+1される。このとき〈交渉〉か〈事情通〉判定を行い、成功すれば+2、クリティカルすれば+3になる。だが、失敗すれば資源を無駄に費やしたことになる。
 またこのとき、数値や追加施設によって何らかのイベント的情報を得られる可能性がある。

ハ;殖産興業 必要資源:1
 特産品や新技術の開発などを行い、国内の生産力を高める。[産業]が+1される。このとき〈事情通〉か〈錬金術〉判定を行い、成功すれば+2、クリティカルすれば+3になる。だが、失敗すれば資源を無駄に費やしたことになる。

ニ;環境整備 必要資源:1
 盗賊を退治したり、医療を充実させたりして住民の生活向上に勤める。[環境]が+1される。このとき〈錬金術〉あるいは何らかの攻撃判定を行い、成功すれば+2、クリティカルすれば+3になる。だが、失敗すれば資源を無駄に費やしたことになる。

ホ;人心掌握 必要資源:1
 住民を説得したり、武力を誇示したりして民衆の支持を取り付ける。[民忠]が+1される。このとき〈交渉〉あるいは何らかの攻撃判定を行い、成功すれば+2、クリティカルすれば+3になる。だが、失敗すれば資源を無駄に費やしたことになる。

ヘ;臨時徴収
 臨時で租税を徴収する。[資源]が+[産業]されるが、[民忠]が半分(端数切捨て)になる。

ト;政策実施 必要資源:下記参照
 新たな政策を発表し、実行する。それぞれの追加施設に記された条件をこの時点で満たしているもののみ、建設が可能である。
 建設の時点でに必要な[資源]を消費できなかった場合、[資源]が0となって政策も失敗する。

●教育向上 条件:[環境]5以上、[資源]1消費
 初等教育を充実させ、領民の識字率を向上させる。行動決定フェイズに[情報][環境]が自動的に+1される。


楽市楽座 条件:“教育向上”
 領内での商業を自由化させる。行動決定フェイズに[情報][産業]が自動的に+1される。


農政改革 条件:[情報]7以上、“教育向上”、[資源]1消費
 麦以外にも各地の土地にあった特産品を生産させ、農民の生活向上を図る。[産業][民忠]とその上限が+2される。


●市議会 条件:[民忠]5以上、[環境]7以上、“教育向上”、[資源]2消費
 住民に自治を許し、自発的に政治に参加させる。
 各時単位ごとに2回、資源を1消費して[情報][産業][環境][民忠]のいずれかを+2する。これは必ず2回行われる。何を上昇させるかはPLが決定してよい。


●公共事業 条件:[産業]5以上、[環境]6以上、[資源]2消費
 堤防や上下水道の整備、公衆浴場の建築、宮殿の改修などを行い、環境の整備と雇用の促進を同時に狙う。〈錬金術〉判定を行い、成功すれば[環境]が+2、クリティカルすれば+3される。また同時に〈交渉〉判定を行い、成功すれば[民忠]が+2、クリティカルすれば+3される。いずれも失敗すれば何も得られない。
 また、建てた設備の内容によっては何らかのイベントが発生する場合がある。以下に例を挙げる。

  1. 防諜機関:偽装工作による[情報]の低下を防ぐ
  2. 最新式堤防:洪水の発生による[産業]の低下を防ぐ
  3. 医療制度改革:疫病の発生による[環境]の低下を防ぐ
  4. 貧民救済制度:暴動の発生による[民忠]の低下を防ぐ
  5. 温泉の開発:何らかのイベントが発生するかも

チ;支援
 どこかの行動に同行し、[タイミング:メジャーアクション]の支援を行う。このとき全登場キャラクターは[エンゲージ]しているものとして扱う。
 支援は本来の行動の前に行うこと


 各“PL”に与えられた行動権は1回だけである。つまりPCがファミリアやトループを所持していてもそれらはPCと同時に行動することはできない。但し登場さえしていれば[タイミング:メジャーアクション]以外の行動を行うことは可能である。


2:行動フェイズ
 “支援”以外を行う各PCごとにシーンを用意し、決定したとおりの判定を行う。
 各キャラクターは方針決定フェイズでの行動に対応したシーンのみに登場できる、但し∵神移∵や∵不可知∵など奇跡による登場は可能である。このとき登場したキャラクターは任意の行動を行ってよい。
 各PLに与えられた行動権は1回だけである。但し∵不可知∵、∵戦鬼∵、∵絶対攻撃∵等の奇跡による追加行動は例外である。もちろん、これら奇跡による追加行動は行動フェイズ本来の結果を見てから使用を決定してよいし、奇跡は[舞台裏]からでも使用できることは覚えておくこと。
 また∵紋章∵を使用することでそのシーンにおいてクリティカルで成功した場合と同じ結果を得る。但し∵真名∵と違い実際にクリティカルしたわけではないのでシーンタロットが正位置にはならない。


3:ランダムイベント発生フェイズ
 全てのPCが行動を追えた直後におこなう。マスターシーンとする。全PCは【希望】判定を行うこと。このとき誰かがクリティカルするか、全員が成功した場合は「ランダムイベントチャート」を振ることができる。但し全員が失敗するか、誰かがファンブルした場合は「ランダムトラブルチャート」を振る。同時にクリティカルとファンブルが発生した場合は1:1で相殺し、多いほうの結果が採用される。複数人がクリティカル、あるいはファンブルした場合でも1回だけ振ること。

ランダムイベントチャート(D10、チョイス不可)
0:部下が自発的に俸禄を返還してくれる。[資源]+2。
1:住民たちが村の特産品を売り込みに来る。[情報]+1。
2:新たな鉱脈が発見される。何の鉱脈かはPLが決定してよい。[産業]+1。
3:住民が自発的に街道や上下水道を整備し始める。[環境]+1。
4:PCたちの政策が理解され始める。[民忠]+1。
5:領内から天慧院の合格者が現れる。[資源]を1消費して任意の数値を+2してよい。
6:謎の行商人現る。追加で1回何らかの行動を行い、クリティカルで成功してくれる
7:空前の学問ブーム。条件を無視し“教育向上”を得る。すでにあるなら行商人が来る。
8:自治の機運が高まる。条件を無視し“市議会”を得る。得たくないなら行商人が来る。
9:優秀な人材が仕官を希望する。GoBサンプルキャラのうち1人が仲間キャラとなる。
 あるいは各PLの持ちPCを仲間キャラとして登場させてもよい。
 このとき、各PLは全PCの消費経験点が120点以下になるようにすること。

ランダムトラブルチャート(D10、チョイス不可)
0:イナゴの大量発生。[資源]が半分(端数切捨て)になる。
1:外部勢力の偽装工作。[情報]が半分(端数切捨て)になる。
2:大洪水の発生。[産業]が半分(端数切捨て)になる。
3:疫病の発生。[環境]が半分(端数切捨て)になる。
4:困窮した民が暴動を起こす。[民忠]が半分(端数切捨て)になる。
5:詐欺まがいの方法で借金を増やされる。[負債]+1。
6:クラインザーグシュノーの大量発生。戦闘開始(環境、民忠)
7:陰りの森から闇の眷属が襲来してくる。戦闘開始(産業、環境、民忠)
8:ドラゴンが襲来してくる。戦闘開始(資源、産業、環境、民忠)
9:帝国の軍事介入。戦闘開始(資源、情報、産業、環境、民忠)

 トラブルチャートで戦闘が発生した場合「問題地域を放棄する」と宣言すれば即座に戦闘は終了する。但しそのとき後ろに書かれた数値が半分(端数切捨て)になる。但し勝利した場合、該当する数値が+1される。


4:イベント発生フェイズ
 何らかの条件を満たした場合、このフェイズにおいてイベントのシーンが発生する。シーンプレイヤーや登場するPCはそのつどGMが指定する。もしイベント発生条件を満たしていない場合、このフェイズはスキップされる。
 なお、行動フェイズで徴収を行っていなかった場合、このフェイズで自動的に[税収]だけ[資源]が増減する。このときPCの行動は消費されない。
 また、PC間のイベントがPLから提案され、GMが許可した場合はこのフェイズでシーンを設定する。
 またこのとき、[負債]が[民忠+環境+資源]以上であると疫病・飢饉・暴動などが発生する。PCのうち誰かが〈事情通〉または〈錬金術〉判定でクリティカルを出さない限り[環境]及び[民忠]がそれぞれ0まで減少する。もしすでに[環境]も[民忠]も0ならばその時点でベイレムーヴァが凍の指輪を奪い取りにやってきて、クライマックスに突入する。



 こうして3ヶ月(6時単位)で国内を立て直し、負債をできるだけ軽減するのが目的である。
 クライマックスは債権の取立てに来たベイレムーヴァとの戦いになるが、古式ゆかしい制約に基づき彼は「負債を取り戻すために相応しいだけの力」しか振るうことができない。ゲーム的に言うと[負債]を1支払うごとに彼のもつ魔印が2つ使用できなくなる。